30代になってから税理士になれるのか不安を感じている人も少なくありません。しかし、税理士業界は若手人材が不足していることもあり、30代からのキャリアチェンジのチャンスが広がっています。
今回の記事では、税理士業界の現状や、30代からでも税理士になる方法を解説しています。30代・実務未経験でも転職に活かせるポイントや事前に注意しておきたい点も紹介していますので、自分の強みを活かせる事務所を探してみましょう。
税理士業界の現状
税理士業界は少子化や高難易度の税理士試験が理由で受験者数が減少して、人手不足の状態です。一方で、働き方改革の影響で増加する個人事業主やフリーランスのサポートのため、税理士への需要は高まってきています。ここでは、税理士業界の現状を解説します。
税理士業界は人手不足
税理士業界では複数の要因が重なり、人手不足となっています。その一つは、2023年に受験資格が緩和された税理士資格の取得難易度を理由とした受験者の減少と少子化の影響です。二つ目は、2001年に税理士法で税理士法人制度の創設が認められて、中小規模の税理士事務所ではなく、高い給与や福利厚生が充実している大規模な税理士事務所へ人材が流れています。
一方、働き方改革を背景として個人事業主やフリーランスが増加傾向にあり、自分で税申告する人も多くなってきました。インボイス制度をはじめとする税制改正に対応するため、税理士に依頼する数も増加しています。税理士になる人が減っている中、需要が高まっており、人手不足が深刻化しています。
資格保有者が高齢化している傾向にある
日本税理士会連合会が実施した平成26年1月の調査によれば、60歳代が全体の30.1%以上、50代が17.8%です。30歳代未満は10.9%で、資格保有者が高齢化している傾向にあります。
売り手市場である税理士業界では、30代の実務未経験の税理士でも転職に成功しやすいとされています。高齢化が進む業界全体として、次の世代を担う税理士の育成が急務です。
出典:日本税理士会連合会「税理士って?〜一生の仕事を探すなら〜」
ITやAIの発達により高い専門性が求められている
会計ソフトの普及で、単純な記帳代行や税務申告の作業が簡素化しています。今後はITやAIの発達により業務の一部が代替されると見込まれています。一方、高い専門性が求められる税務に関するアドバイスは人間でなければ対応が難しいでしょう。
また、飲食業や不動産業など特定の業界に特化している税理士や、中小企業の事業承継(M&A)や補助金申請などの、顧客のニーズが高い業務に特化した税理士も求められています。今後はITやAIの発達についていきながらも、経営相談に応じるなど顧客に対するサービスの充実が必須です。
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30代未経験でも税理士を目指せる?
税理士業界では、少子高齢化の影響もあり30代未経験者の需要が高まっています。特に30代前半は転職しやすく、試験の科目合格や実務経験を積むことでキャリアアップの道も広がります。未経験で税理士を目指すポイントをみていきましょう。
30代未経験でも税理士になることは可能
税理士業界では30代は若手となる傾向にあります。令和5年度第73回税理士試験結果表(学歴別・年齢別)によれば、受験者の約3割が30代です。30代で受験している人も多くいることがわかります。
税理士業界では、30代前半は未経験でも転職しやすい一方で、後半になれば実務経験を求められるため要注意です。もし転職を希望する場合は、今まで経験してきた業務や今後のキャリア設計を明確にするなど入念な準備をしていきましょう。
出典:国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果表 (学歴別・年齢別)P2
科目合格を持っていた方が転職に有利
税理士事務所や会計事務所などで「税理士試験の科目合格者」を募集しているケースがあります。そもそも税理士になるには、5つの試験科目に合格かつ実務経験が2年必要です。税理士試験は、試験科目の一つでも合格したら一生有効な資格とみなされる科目合格制度が採用されています。
税理士は、働きながら税理士資格取得を目指している人が多く、税理士試験に合格するには一般的に複数年かかります。転職時に科目合格を複数持っていれば、知識があるとみなされて、有利になります。
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未経験を募集している税理士/会計事務所もある
年齢層の若い人中心の事務所や事業拡大中の事務所を中心に、30代の未経験者を募集しているケースがあります。比較的、ITやテクノロジーに強い30代は、電子申告や会計ソフトに柔軟に対応できます。税理士試験の勉強をしている人たちも多いため、最新の税務に詳しいことも理由です。
また、入社後に税理士資格の取得支援制度や教育支援が整っている事務所もあります。試験直前に試験休暇を取得できる、残業がほとんどなく勉強に集中できる環境など、資格取得をサポートしてくれます。
未経験者が強みにできる要素もある
未経験者でも、日商簿記2級の保有・一般企業での経理経験があると強みになります。もちろん、はじめは税務業務では即戦力となることは難しいです。しかし、未経験者でも、領収書のチェックや会計ソフトの入力などはできます。
もし、まだ税理士資格を取得できていない場合は、働きながら税理士を目指していることや仕事への挑戦意欲、学習意欲が強いことをアピールしましょう。
30代前半と後半ではキャリアの描き方が異なる
難易度が高い税理士試験は、合格までに長期間の勉強が必要です。30代前半では税理士資格を取得してキャリアをスタートした方も多いため、税理士資格を保有していないが科目合格者しているという方でも採用される可能性があります。
30代前半で実務経験が豊富な人は貴重であるため、未経験でもキャリアプランの選択肢が広くなる傾向にあります。一方、30代後半では税務の知識のみならず、マネジメント経験を求められるケースも多くなり、30代前半に比べると選択肢が限定されることも少なくありません。
税理士資格登録には実務経験が必要です。30代から税理士を目指すなら、できるだけ早期に実務経験を積める環境へ転職することで、キャリア形成や転職活動にも有利になります。
30代で税理士を目指すメリット/注意点
30代で税理士を目指すことには、多くのメリットといくつかの注意点があります。税理士資格はキャリアを安定的に築けるのが大きな利点である一方、難易度の高い試験を突破するには勉強時間の確保や経済的な計画が必要です。ここでは、30代で税理士を目指すメリットと注意点を解説します。
メリット①資格に期限がなく、長く働くことができる
税理士資格は一度取得すれば期限がなく、退職するまで仕事ができます。日本税理士会連合会が実施した平成26年1月の調査からもわかるとおり、税理士の従事年数が10年以上の方が過半数を占めています。税理士は税務書類の作成や税務代理などの税務の専門家としての独占業務があるため仕事はなくなりませんし、独立開業した場合は定年制度はありません。
出典:日本税理士会連合会「税理士って?〜一生とを探すなら〜」
メリット②年収は高い傾向にある
厚生労働省の職業情報提供サイトjobtag「年齢別の年収」によれば、30歳〜34歳は平均年収682.8万円、35歳〜39歳は平均年収828.9万円です。この中には独立して税理士事務所を経営している人や大手税理士法人で働く人など、比較的高年収の税理士も含まれています。
未経験の税理士であればすぐに平均年収になるとは限りませんが、業務経験年数や科目合格数にともなって上昇する傾向にあります。
出典:厚生労働省の職業情報提供サイトjobtag「年齢別の年収」
メリット③ライフスタイルに合わせた働き方を選びやすい
税理士資格があれば、税理士事務所に所属する以外にも一般企業への勤務や独立開業などの道も選択できます。税理士資格は生涯有効な資格なので、出産や子育て、介護などで離職しても、税理士として再度就職が可能です。
一般企業でも経理や財務で働くほか、税務会計のアドバイザーとして活躍もできます。独立すれば自分の得意な分野で仕事ができ、時間や場所などを自らのライフスタイルに合わせて決められることも魅力です。
注意点
税理士試験は難易度が高く、合格するには早くても2〜3年、通常は3〜5年以上かかるため、勉強時間を確保する工夫が不可欠です。一般的に1科目につき約150〜600時間の勉強時間を要します。
勉強に専念すれば短期間での合格が見込まれるものの、その期間は無収入となり経済面でのデメリットが発生します。一方、働きながら勉強すれば、勉強時間は限られ、合格までは長期間に及ぶ恐れもあるでしょう。
税理士事務所によっては、実務経験を積みつつ残業を減らしてくれたり、試験前は休みが取れるように調整してくれたり、資格取得を支援してくれる事務所もあるので、調べてみましょう。
税理士を目指して税理士/会計事務所に転職成功させるポイント
税理士・会計事務所への転職を成功させるには、自分のキャリアビジョンやスキルを明確にし、最適な事務所を選ぶことが重要です。しかし、税理士を目指して転職を考える方の多くは、キャリアの方向性に合った事務所を見つけられるか不安に感じている人も少なくありません。ここでは、税理士を目指して、転職を成功させるポイントを紹介します。
自身の税理士としてのキャリアを明確にする
税理士としてのキャリアプランを明確にした上で転職をしましょう。相続税や国際税務など特定分野に特化した事務所で専門性を高めたい場合は、大規模の税理士法人へ就職がおすすめです。担当者が複数いるため、分業制が導入されており、特定の業務に集中できます。中小規模の税理士事務所は、特定の業種・業界に強みを持った業務を持っていたり、地域に根ざした業務を経験できたりします。顧客を一人で担当することもあり、一通りの業務が経験できるのが特徴です。
将来的に独立開業する可能性がある場合は、自分が目指すキャリアを実現できる就職先を選択しましょう。
税理士資格以外のアピールポイントを考える
パソコンスキル、コミュニケーション能力、今までの経験など税理士資格以外の自分の価値をアピールしましょう。仕事をする上では、税理士としての専門知識はもちろん、仕事に対する姿勢やチームワークも大切な要素です。
税務申告・会計業務で使用するソフトへの対応はもちろん、顧客と密接に関わりながら業務を進めるため、税理士には欠かせないコミュニケーションスキルも求められます。法改正があった際には、すぐに今までの法律と比較し、取るべき対策を常に学び続ける姿勢も不可欠です。
自己分析を徹底、経験やスキルを洗い出し、多面的にアピールできるポイントを考えましょう。
事務所の特徴や特色について事前に調べておく
転職活動を開始したら、気になる税理士事務所の特徴や特色について調べておきましょう。残業時間や繁忙期の度合いなど、事務所によって異なる部分があるからです。
大手税理士法人であれば、取扱業務の規模が大きいため担当する業務の範囲が狭くなることもある一方で、中小規模の税理士事務所であれば幅広い業務経験を積めます。
税務会計業界への転職でも企業研究は必要です。転職したい事務所の特徴や特色・魅力を分析してみてください。
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税理士特化の転職エージェントに相談する
税理会計領域に特化した転職エージェントに相談をすれば、税理士の求人のバリエーションが豊富で希望する転職先を見つけやすいでしょう。
会計業界に精通しているキャリアアドバイザーが求人票だけではわからない企業・事務所の雰囲気や特徴を伝えてくれます。キャリア相談も的確で実務的なアドバイスも受けられるため、不安なく転職活動を進めることが可能です。
まとめ
30代未経験でも税理士になれるチャンスは十分にあります。特に30代前半であれば、未経験でも転職しやすく、科目合格があるとより有利な転職が可能です。
通常、税理士試験は難易度が高く、全科目合格まで3〜5年以上かかります。税理士試験の勉強をしながら、転職するには、自身のキャリアビジョンを明確にし、税理士資格以外のスキルもアピールすることが大切です。税理士の求人バリエーションも多い会計業界特化の転職エージェントを活用することで、より適切な転職先を見つけやすくなります。ぜひ、この機会に登録して、税理士としてのキャリアを築いていってください。