税理士法人のBIG4とは?年収や業務の特徴、求人の傾向などを紹介!

2025年4月9日(記事更新日:2025年4月9日)

税理士法人のBIG4とは、世界規模で展開している四大会計事務所を指します。グローバルな業務環境で高度な知識が必要なため、年収水準が高く、キャリアの成長機会も豊富にあるのが特徴です。
今回の記事では、BIG4税理士法人の概要や特徴、年収の傾向、業務内容の特性などをくわしく解説します。あわせて中小税理士法人との違い、求人の傾向についても紹介するので、今後のキャリアにBIG4税理士法人が適しているかを見極める参考にしてください。

BIG4税理士法人とは?

BIG4税理士法人とは、世界的な会計事務所グループに属する4つの大手税理士法人を指します。主に上場企業や外資系企業を対象に、移転価格税制、M&A税務、国際税務など、専門的なサポートをおこなっています。ここでは、どのような法人が属しているのか解説します。

BIG4とは

BIG4とは世界規模で展開している4つの巨大な会計事務グループの総称で、日本国内においても、主要な税理士法人として知られています。
4つの法人は以下のとおりです。

・デロイトトーマツ税理士法人
・KPMG税理士法人
・PwC税理士法人
・EY税理士法人

BIG4税理士法人は上場企業や外資系企業を主要なクライアントとし、高度な税務サービスを展開している点が特徴です。企業の税務戦略の策定や移転価格税制、M&Aに関するアドバイザリー業務など、経営の根幹にかかわる分野で活躍しており、世界的にも高い評価を受けています。グローバル企業の税務戦略に携わる機会が多く、業務を通じて専門知識のほか、国際的な経験やスキルが必要です。
そのため、BIG4税理士法人でのキャリアを目指す場合は、税務や会計に関する深い理解に加え、英語力や国際的な視野を養うことが重要です。

デロイトトーマツ税理士法人

デロイトトーマツ税理士法人は、世界150以上の国と地域に展開するデロイト トウシュ・トーマツ・リミテッドのメンバーファームの一員です。日本国内では、有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツコンサルティング合同会社などとともに、総合的なコンサルティングサービスを展開しています。
国内18都市に拠点を持ち、1,000名を超えるプロフェッショナルが在籍しています。全国的に拠点数が多いため、地方企業にも充実したサポートを提供できるのが強みです。

デロイトトーマツ税理士法人は、税務サービス、国際税務、M&A関連業務、税務コンプライアンスなど、多岐にわたる分野で専門的なサポートをおこなっています。

KPMG税理士法人

KPMG税理士法人は、日本国内では東京・名古屋・京都・大阪・広島・福岡の6都市に拠点を持ち、約820名のプロフェッショナルが在籍する大規模な税理士法人です。あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティングをメンバーファームとして擁し、総合的な税務・会計コンサルティングを提供しています。

クライアント数は約3,300社にのぼり、医療、製造、金融などの業界に特化した専門的な税務アドバイザリーができるのが強みです。また、143の国と地域にネットワークを持ち、国内企業のみならず、多国籍企業の税務戦略やコンプライアンスにも対応できます。
業務内容は、国際・国内税務、M&A関連業務、資産税コンサルティング、移転価格税制への対応などが含まれ、企業の成長やグローバル展開を支援する役割を担っています。

PwC税理士法人

PwC税理士法人は、世界149ヵ国に約37万人以上のスタッフを擁するPwCグループの一員です。国内では、PwC Japan有限責任監査法人やPwCコンサルティング合同会社などをメンバーファームとして持ち、監査・コンサルティング・税務の各分野で総合的な支援をおこなっています。

日本国内の拠点は東京・名古屋・大阪・福岡の4都市にあり、税理士や公認会計士を含む専門家が約400名、従業員総数は約800名です。国内外の企業を対象とした、税務サービスや国際税務、M&Aサービスに加え、デジタルトランスフォーメーションや組織再編といった戦略的なサポートが得意です。

EY税理士法人

EY税理士法人は、世界150以上の国と地域に約30万人以上のスタッフがいるEY(Ernst & Young)グループの一員であり、グローバルなネットワークを強みとする税理士法人です。日本国内では、EY新日本有限責任監査法人やEYストラテジー・アンド・コンサルティングなどのメンバーファームと連携し、監査・税務・コンサルティングを総合的に提供しています。

国内の拠点は、東京・大阪・名古屋・福岡・沖縄の5都市です。提供するサービスは、国内・国際税務サービス、M&A税務サービス、事業承継サービス、税務コンサルティング業務など多岐にわたります。特にM&Aや事業承継などの複雑な税務戦略のサポートに強みを持っています。

BIG4税理士法人の年収

BIG4税理士法人の年収は、一般的な税理士法人より高い水準にあるとされています。厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、従業員数1,000人以上の公認会計士や税理士を擁する法人の平均年収は922.3万円です。一方、100〜999人規模の法人では718.6万円、99人以下の小規模法人では706.3万円とされており、法人の規模が大きいほど給与水準が高くなる傾向が見られます。

このデータには、BIG4税理士法人以外の大規模税理士法人や公認会計士の年収も含まれており、BIG4税理士法人の年収と完全一致はしません。しかし、BIG4税理士法人は高度な税務業務を担い、企業としての収益力も高いため、中小規模の税理士法人と比較して、給与水準が高くなる傾向にあると考えられます。

また、BIG4税理士法人ではアソシエイト、シニアアソシエイト、マネージャー、シニアマネージャーなど、役職によって年収が大きく異なります。特にシニアマネージャークラス以上になると、年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。

引用:令和5年賃金構造基本統計調査

BIG4税理士法人の業務の特徴

BIG4税理士法人では、外資系企業や上場企業を主なクライアントとし、国際税務やM&A税務など高度な専門業務を提供しています。ここでは、BIG4税理士法人が対象としているクライアント、業務内容、年間スケジュールの特徴を解説します。また、中小税理士法人との違いもあわせて見ていきましょう。

クライアントの特徴

BIG4税理士法人のクライアントは、外資系企業や上場企業などの規模が大きい企業が中心です。国際的に事業を展開している企業が多く、グローバルな税務戦略や移転価格税制、M&A税務などの高度なサービスが求められます。

また、一部の法人では中堅企業向けのサービスも展開しており、国内企業の税務コンサルティングを支援するケースもあります。基礎的な税務業務から通常の法人税申告業務にとどまらず、より複雑な税務問題への対応が必要です。

業務の特徴

BIG4税理士法人の業務は、大規模なクライアントが多いため、国際的な案件が中心で、高度な専門性が求められます。BIG4税理士法人ならではの業務の特徴を解説します。

■ 国際的な業務が多い
グローバルに展開する企業のクライアントが多いBIG4税理士法人では、日本国内の税制に留まらず、他国との違いを考慮しながら、適切な税務戦略を立案するスキルが必要です。

複数の国に拠点を持つ企業に対しては、それぞれの国の課税制度や規制を正確に把握し、税務リスクを最小限に抑えるアドバイスが求められます。異なる国の税制や規制が絡むため、日本と海外の整合を図らなければなりません。BIG4税理士法人は、世界各国に広がるオフィスや専門家ネットワークを活用し、国際税務の課題に対応できる環境が整っています。

また、多国籍企業の税務戦略を担当する際は、異なる税制の違いを理解するだけでなく、言語や文化の壁を超えたコミュニケーション能力も求められます。国際的な環境で働きたい人にとっては、BIG4税理士法人は大きな成長の機会を得られる場所といえるでしょう。

■ 専門性の高い業務をおこなえる
BIG4税理士法人では、一般的な税務業務にとどまらず、監査法人やコンサルティングファームと連携しながら、企業の経営戦略、財務改善、リスクマネジメントの領域にも携わる機会があります。

大手企業や外資系のクライアントは、複雑な税務問題を抱えているケースが少なくありません。そのため、国際税務やM&A、組織再編など、中小規模の税理士事務所では扱うことの少ない特殊な案件を担当するケースもあり、専門性を高めることが可能です。また、グローバル企業の税務戦略やクロスボーダーM&A案件に携わるチャンスも多く、国際的な業務に関心がある人にとっては最適な環境といえます。

他にも、BIG4税理士法人の大規模な組織だからこそ、内部研修や国際的な研修に参加できることも魅力の一つです。これにより、常に最新の税制やグローバルな税務動向を学び続けられます。

■ チームでクライアント対応に当たることが多い
BIG4税理士法人では、業務が高度で専門的な内容を含むことが多いため、専門分野に特化したスタッフが集まり、チームを編成して業務を進めるのが一般的です。国際税務、M&A、移転価格税制などの分野では、異なる専門領域のメンバーが協力することで、最適なソリューションを提供できます。

チームでの働き方は、今後のキャリア形成にも有利です。異なる分野の専門家と協力することで、税務の枠を超えた幅広い知識を習得でき、さまざまなプロジェクトやクライアントに関与する機会が増えます。特定の専門分野に深く携わりながらも、税務全体に対する理解を深められることも魅力です。

年間スケジュールの特徴

年間スケジュールはアサインされるクライアントによって異なるものの、一般的な税理士事務所と同じく大まかに繁忙期と閑散期に分かれています。繁忙期と閑散期のスケジュールを把握し、自分のワークライフバランスをどのように調整できるかを考えておくとよいでしょう。

■ 繁忙期
繁忙期におこなう業務は以下のとおりです。

・1〜3月:12月決算企業の税務申告対応
・4〜6月:3月決算企業の税務申告対応

1月から3月は、12月決算の外資系企業の税務申告対応が重なるため、業務が集中する繁忙期です。1月は海外本社へのレポート提出や監査対応が中心となり、税務データの整理と各国の税制にもとづく報告業務が必須です。2月は法人税の確定申告の準備が本格化し、3月は税務申告のミスを防ぐための精査が徹底されます。

4月は3月決算の企業に対するタックスレビューがおこなわれ、法人の税務リスクを事前に評価し、最適な税務戦略を立てます。5月から6月にかけては、国内企業の消費税や法人税の申告対応が増えます。繁忙期はチームで協力をしながら業務を進めていきます。

■ 閑散期
閑散期は7月から9月となることが多いです。法人税や消費税の申告業務が一段落し、次の決算期までの準備期間にあたるため、多くのスタッフが有給休暇や長期休暇を活用しやすいタイミングです。

ただし、受け持つプロジェクトや所属する部署によって業務量にはばらつきがある点には注意しましょう。国際税務やM&A税務を担当するチームでは、企業のグローバル展開や買収案件のスケジュールに左右されるため、閑散期でも一定の業務負担があることがあります。

中小税理士法人/事務所との業務内容比較

BIG4税理士法人は、上場企業や外資系企業を中心とした大企業をクライアントに持ち、高度な専門業務を提供するのが特徴です。一方で、中小税理士法人/事務所では、中小企業や個人事業主を主なクライアントとし、地域に根差したサポートをおこなうことが一般的です。

中小税理士法人/事務所では、税務申告書の作成や記帳代行に加え、経営コンサルティングなど幅広い業務に携わる機会があります。経営者と直接的なやり取りが多いため、ビジネスの意思決定にかかわるアドバイスをおこなうケースも多く、税理士としての総合的なスキルが磨かれます。また、個人単位でクライアント対応をおこなうことが多いため、業務の全体像を把握しやすい点も特徴です。

中小規模の税理士法人/事務所で経験を積むことで、将来的な独立開業に必要な経験や人脈を得やすいメリットがあります。経営者との密接な関係を築くことで、税務の枠を超えた実践的な知識を学べる環境が整っているため、独立を目指す人には適した選択肢となるでしょう。

BIG4税理士法人の求人傾向

BIG4税理士法人の求人は、幅広い職種で人材を募集しており、税理士や公認会計士の資格保有者だけでなく、ITやDXの分野で活躍できる人材の採用にも積極的です。オープンポジションとして職種を限定せずに採用をおこなうケースもあれば、移転価格税制やM&A税務など、専門性の高い業務に対応できる人材を求める求人も多数存在します。

専門性の高い分野でのポジション募集

税理士や公認会計士の資格に関しては、科目合格者を含む資格保有者に加え、実務経験を重視した採用が多いのが特徴です。税務分野では、勉強した知識がそのまま実務に直結するため、科目合格者でも応募可能なケースが多く、試験合格を目指しながら経験を積むことができる環境が整っています。

また、BIG4税理士法人では税務業務の効率化を進めるため、DX案件の需要が増えており、エンジニアやITシステムの開発担当者の求人も増加傾向です。税理士資格を持たなくとも、ITツールやシステムの設計・開発のスキルを持つ人材は、BIG4税理士法人のDX推進部門で活躍する機会があります。

英語が歓迎条件となっている求人募集

グローバルな業務が多いため、英語力が歓迎条件となる求人も多いのが特徴です。ただし、応募時点で英語力に自信がなくても、英語の業務に抵抗がなく、学習意欲があれば採用されるケースもあります。実際に、入社後に英語を学びながら国際案件にかかわるメンバーも多く、語学力を伸ばす環境が整っていることも魅力のひとつです。

パート・アルバイトの求人募集

パート・アルバイトの求人では、税理士資格の有無が応募条件になるケースもありますが、実務経験が重視される傾向があります。そのため、資格がなくても実務スキルを活かして働けます。

BIG4税理士法人の求人に応募する際は、自分のスキルや経験がどの職種に適しているのかを見極め、税務の専門知識だけでなく、IT・DXのスキルや英語力などの強みを活かせるポジションを選ぶことが重要です。キャリアアップを目指す方は、事前に求められるスキルを確認し、適切な準備を進めていきましょう。

まとめ

BIG4税理士法人は、国際的な企業の税務戦略やM&A税務など、高度な専門性に対応する世界的に有名な4つの大手税理士法人を指します。4つの税理士法人では外資系企業や上場企業を中心にサポートし、国際税務の分野で活躍できる環境が整っています。BIG4税理士法人では高収入を期待できる一方、専門性を高める努力が必要です。あなたのキャリアプランに合うかを見極めながら、最適な選択肢を考えてみてください。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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