税理士の気になる給与は?様々な角度から年収を分析!

2023年12月19日(記事更新日:2024年3月14日)

 

これから税理士を目指す人にとって、今後の給与は非常に気になるポイントだと思います。
一般的に高収入を想像されるかもしれませんが、働き方や年齢別などによって違いがあることは否めません。
そこで今回は、税理士の給与について解説いたします。
働き方や年代などのカテゴリ別にまとめましたので、将来の働き方と一緒にお考えください。
なお計算にあたっては厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」に基づいています。この統計調査では税理士と公認会計士の給与が一本化されていますが、両者に給与の違いはほとんどないと言われていますのでこの数値を使用します。

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税理士の平均年収

税理士の平均年収をカテゴリ別に分類して下記にまとめました。

税理士全体での平均年収

税理士の平均年収(きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別支給額)は、約747万円でした。
会計事務従事者の平均年収は約450万円ですから、1.5倍以上の高収入が見込まれます。
なお大学卒業後〜75歳まで税理士として働いた場合の生涯年収は約3億5,000万円です(次項の年代別平均年収より計算)。
企業内税理士として働く場合や、社会人が税理士を目指す場合の生涯年収は上記より減額となりますが、それでも高収入が見込まれることは間違いありません。

年代別での平均年収

税理士の年代別平均年収が以下のとおりです。

年齢 平均年収(所定内給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額)
20~24歳約429万円
25~29歳約496万円
30~34歳約582万円
35~39歳約672万円
40~44歳約721万円
45~49歳約770万円
50~54歳約854万円
55~59歳約1,061万円
60~64歳約577万円
65~69歳約643万円
70歳~約629万円

出典:令和4年賃金構造基本統計調査 

年齢とともに上昇し50代にピークを迎えているのは、企業内税理士の給与が年齢につれて上昇しているためです。
一方、60代以降の平均年収が半分程度まで落ち込んでいますが、これは定年後の再雇用による減額や退職が影響していると思われます。またこの調査は開業税理士と企業内税理士が同じテーブルで計算されています。そのため、退職しているはずの60代以降でも年収が発生しているのは、開業税理士によるものが大きいと推察できます。

企業規模・年齢別の平均年収は以下のとおりです。
なお1〜9人の企業規模に関してはデータが存在しないため、10人以上の企業規模で解説いたします。

企業規模税理士の平均年収
10〜99人約693万円
100〜999人約778万円
1000人以上約861万円
年齢企業規模10〜99人の平均年収企業規模100〜999人の平均年収企業規模1000人以上の平均年収
20~24歳約335万円約544万円約398万円
25~29歳約386万円約563万円約607万円
30~34歳約596万円約554万円約650万円
35~39歳約682万円約618万円約771万円
40~44歳約696万円約672万円約940万円
45~49歳約712万円約822万円約875万円
50~54歳約799万円約886万円約943万円
55~59歳約1,021万円約1,137万円約779万円
60~64歳約543万円約855万円
65~69歳約621万円約715万円
70歳~約629万円

企業規模が大きいほど若いうちから高収入が得られる傾向が見られます。
年齢別でも表れていたように、どの企業規模でも50代まで平均年収が上昇しており60代以降に下降しています。
また大企業ほど60代以降に働く人は減少し、中小企業ほど長く働き続ける傾向にあるようです。

<会計事務従事者の平均年収との比較>

会計事務従事者として働く場合の平均年収と、その差額も確認しましょう。

年齢会計事務従事者の平均年収税理士・公認会計士の平均年収平均年収差額
〜19歳約223万円
20~24歳約290万円約429万円約139万円
25~29歳約359万円約496万円約137万円
30~34歳約399万円約582万円約183万円
35~39歳約440万円約672万円約232万円
40~44歳約468万円約721万円約253万円
45~49歳約473万円約770万円約297万円
50~54歳約488万円約854万円約366万円
55~59歳約507万円約1,061万円約554万円
60~64歳約408万円約577万円約169万円
65~69歳約357万円約643万円約286万円
70歳~約364万円約629万円約265万円

上記のとおり、税理士の年収とは差があります。
税理士1年目でも会計事務従事者より、平均100万円以上高い年収が得られ、年齢と共にその差は広がっていきます。
やはり突出しているのは50代後半です。平均年収差額が500万円以上も変わります。
その後の60代以降でも200万円前後の差額が発生したままです。

性別での平均年収

税理士の性別による平均年収は以下のとおりです。

性別平均年収
男性約794万円
女性約595万円

性別で年収差があるのは、出産や育児による退職や長期休暇が原因です。
退職すればその時点で年収は上がらなくなりますが、退職せずに出産・育児休暇を利用した場合でも、基本的にその間は昇給しません。
男女での給与差は否めませんが、専門性が高く難関資格を保有している職種のため、休職期間があっても比較的復職しやすいと言われています。
出産や育児だけでなく家族の介護など、男女問わずライフステージの変化にも柔軟に対応できる職業です。

主要都市ごとの平均年収

税理士の全体的な平均年収は約733万円。
主要都道府県別の平均年収は以下のとおりです。

主要都道府県平均年収
全国約733万円
北海道約651万円
東京都約871万円
神奈川県約515万円
千葉県約618万円
埼玉県約449万円
愛知県約558万円
大阪府約595万円
福岡県約687万円

地域による税理士の年収格差がみられます。開業税理士が平均年収を押し上げていることも考えられますが、全体的に大都市ほど平均年収が高い傾向にあります。

税理士の勤務先による平均年収の違い

税理士の年収は勤務先によっても大きく変動します。
ここでは「税理士法人など」「開業税理士」「企業内税理士」の3つに区分して解説いたします。

会計事務所/税理士事務所/税理士法人の平均年収

会計事務所や税理士事務所、税理士法人は税務の専門ですので、全体的に平均年収も高く設定されています。中でもBIG4と呼ばれる税理士法人(PwC税理士法人・KPMG税理士法人・EY税理士法人・デロイトトーマツ税理士法人)の平均年収目安は、5年目までは500万円前後、〜10年目で1,000万前後、10年目以降は1,200万円〜になります。
ただし業務内容や管理職などのポジション、また経験・スキルなどによっても大きく変わります。

それでは、BIG4以外の税理士事務所や税理士法人の平均年収はいくらくらいなのでしょうか?
BIG4の企業規模が「100〜999人」だとすると、他の税理士法人は仮に「10〜99人」規模として、平均年収は約693万円になります。

独立開業した税理士の平均年収

独立開業した場合、年収は200万円台から3,000万円台まで、かなりの開きが見られます。
年収が増える可能性もありますが、クライアント獲得の競争は年々激化しています。ハイリスクハイリターンであることを認識し、しっかりした準備が必要です。

企業内税理士の平均年収

企業内税理士の給与は、その企業の給与テーブルで決まります。
通常の給与に役職手当が付くイメージです。

企業規模税理士の平均年収
10〜99人約693万円
100〜999人約778万円
1000人以上約861万円

上記には税理士事務所や税理士法人が含まれていますが、それでも企業規模による平均年収の差は見過ごせません。
企業規模が大きいほど平均年収は高額になります。

税理士の将来性

AIやRPA(Robotic Process Automation)の発達により、仕事が奪われてしまうのではないかと言われることもあります。確かにAI等のツールで処理が可能となる記帳代行などについては、社内で完了させるクライアントも増えてくるかもしれません。その結果、顧問料が安くなる可能性は否定できません。
またクライアントとなる中小企業も年々減少傾向が見られます。
中小企業庁が公開した「2020年版中小企業白書」によると、中小企業の数は1999年には約484万社でしたが、2016年には約359万社まで減少しています。このことから2023年現在はさらに減少していることが予想されます。
しかし税理士が完全に不要となることはありません。
毎年税制改正が実施され、税法は複雑化の一途を辿っています。今年はインボイス制度が開始となり、電子帳簿保存法改正の猶予期間が終了します。
税務の知識がなければ上記のような大規模な変更に完全には対応できません。税理士はこれからも企業にとって不可欠な存在なのです。
税理士の業務は、税務戦略や経営コンサルティングといった専門性の高いものにシフトしています。特に経営コンサルタントとしての役割が大きくなってきており、この流れは今後も続くでしょう。
記帳と決算書作成を行い確認する税理士ではなく、税務書類を読んで経営コンサルティングを提供する税理士にトレンドが移りつつあるのです。

出典:2020年度版 中小企業白書 

税理士が年収を上げるには

前項で税理士の顧問料が安くなる可能性についてお伝えしました。
そこで年収を上げるための具体的な方法を考えてみましょう。

現在の職場で考える

税理士法人などで勤務する場合や企業内税理士として年収を上げるなら、まずは社内での昇格や昇進を目指してみる方法があります。
条件に応じた給与テーブルが設定されているはずですので、給与規程を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。税理士は専門性が高いため、勤続年数以外の条件が設定されている可能性も大いにあり得ます。
仮に毎月の手当などがプラスされれば、年収アップにつながります。

新しい環境を考える

企業規模やその他の要因により、税理士の年収は大きく増減します。
たとえば小規模よりも大規模の税理士法人で働く方が、年収が高くなる傾向にあります。
もちろん業務内容や管理職などのポジションによって一概には言えませんが、税理士としての経験と知識を身につけたなら、企業規模などに目を向けてみるのもいいかもしれません。

専門性・得意分野で考える

税理士にも専門分野があり「法人税専門」「相続税専門」「国際税務専門」のように分野が分かれています。
スキルや経験を積みながらも、より専門性を高めて得意分野を作ることで、高度なプロジェクトからも指名されるようになり、結果として年収アップを目指すことも可能です。
BIG4の中途採用枠が専門ごとに細分化されていることからも、専門性を鍛えることには価値があると考えられます。

開業という選択肢を考える

経営者としての一面も求められますが、開業税理士という選択肢もあります。
受ける仕事も顧問料も自らが決められるため、高単価で高品質のサービスを提供することもできますし、単価を抑えて多くの顧客を獲得することも可能です。
もし開業税理士となり成功すれば、年収3,000万円となる可能性もあります。
一方でゼロからスタートする開業にはリスクも伴いますので、うまくいかなかった時のことも十分検討した上で決断してください。

まとめ

税理士の平均年収は約747万円で、職業全体の全国平均より高水準の傾向があります。また税理士という資格を保有していることで比較的に復職や再就職などもしやすく、独立開業してさらに年収アップを目指すことも可能です。
もし現在、試験勉強中の方も税理士となることで、新たな人生を切り拓くこともできるでしょう。
まずは本記事の内容を参考に今後の働き方とキャリアを考え、欲しい未来に手が届くかを検討してはいかがでしょうか。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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