税理士の経営コンサルティング業務とは?将来性や必要なスキルなどについて解説!

2024年2月6日(記事更新日:2024年2月6日)

税理士は独占業務である税務代行などを中心に業務を行いますが、付加価値向上などを目的に経営コンサルティング業務を提供する機会も増えてきました。
ITツールの向上を背景として、会計業務などを税理士に外注しない企業が増加してきたことも一因です。
そこで本記事では、税理士による経営コンサルティング業務について解説いたします。
一般的な経営コンサルタントとの違いや、税理士に求められているコンサルティング業務とは何なのかについて理解を深め、お客様から選ばれる税理士になりましょう。

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経営コンサルタントとは

経営コンサルタントとは、企業の様々な領域において経営者にアドバイスを行う仕事です。会社の経営や財務状況から企業の課題点を洗い出し、専門的な観点から課題解決の提案を行います。
主に経営者層からヒアリングを行い、要望をまとめたうえで社内の状況や業界全体の環境などを徹底的に調査し、解決策を提案します。
経営コンサルタントは提案することが業務であり、その提案を受け入れ実行に移すかどうかはクライアントの判断です。
取り扱う領域は経営方針、新規事業、会計業務、資金調達、事業再生、M&Aなど多岐にわたります。経営全体をサポートするため業務範囲は非常に幅広く、深く広い知識と経験が要求されます。
このような理由から、特化型コンサルティング会社も少なくありません。
たとえばM&A特化型、事業再生特化型、販売支援特化型、戦略系コンサルティング特化型などです。特化型コンサルティング会社でも、必要であれば周辺業務のコンサルティング業務も請負います。

税理士と経営コンサルタント

基本的に税理士は経営コンサルタントではありませんが、経営コンサルタントと親和性が高いと言われています。

税理士と経営コンサルタントの違い

税理士の本業は独占業務である「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」です。
これらは税理士以外に行えず、なおかつ業種を選ばず必要とされる業務になります。
そのため必然的にどのような税理士でも、上記の独占業務はほぼ必ず実施しています。
税理士がコンサルティング業務を提供する場合は、普段から扱っている財務面や資金調達などに関連する領域を専門とするのが一般的です。
たとえば貸借対照表や損益計算書の内容を読み解き、今後の資金繰りについてアドバイスをする、といったものです。
なお税理士事務所や税理士法人の中には財務面や資金調達のみならず、幅広く経営コンサルティングを行っているケースもあります。

一方で経営コンサルタントは特定の資格を必要とせず、専門分野によって業務も異なります。
たとえばM&A特化型経営コンサルティング会社と事業再生特化型経営コンサルティング会社では、取り扱う業務内容やクライアントが必要とする情報・アドバイスは違います。ただし、どの分野でも共通する経営状況の分析や企業成長対策などはあります。

税理士が経営コンサルティング業務を行うメリット

税理士が経営コンサルティング業務を提供する場合、下記のようなメリットが生まれます。

経営アドバイスを行いやすい立場

税理士は日頃からクライアントである中小企業の財務状況の実態を把握・理解し、信頼関係も構築しているため、経営に関してアドバイスしやすいものです。
もし経営コンサルティング業務提供は知識があれば、既存クライアントが悩んでいる際には、経営コンサルティング業務を提案してみてはいかがでしょうか。

付加価値の提供による差別化

通常、企業が税理士に依頼する業務は独占業務です。
業界・業種に特化している場合を除くと、税理士にも競合が多く存在することになります。
そこで経営コンサルティングが可能な税理士となれば、クライアントからは「付加価値のある税理士」「独占業務以外でも頼りになる税理士」と認識されることでしょう。
ITツールの進化により会計業務などの契約が減少したとしても、経営コンサルティング業務の提案で売上貢献できる可能性が生まれます。
また、経営コンサルティング業務の経験・スキルを身に着けることができれば、ステップアップする際に有利に働く可能性がありますし、経営コンサルティング業務ができることは大きな強みとなるでしょう。
また、税務担当者が経営コンサルティング業務に従事できるならば、転職でも有利に働く可能性があります。
開業して新規顧客を開拓する場合も、経営コンサルティング業務ができることは大きな強みとなるでしょう。

クライアントの裾野が広がる

一般的に、経営コンサルティング会社がクライアントとするのは大手企業や官公庁です。
一方で、税理士のクライアントは中小企業が中心です。そのため税理士が経営コンサルティング業務を開始したとしても、通常の経営コンサルティング会社とクライアントの取り合いになりにくいのです。
また中小企業からすると、経営コンサルティング会社への依頼は気後れすることもあるようです。このような中小企業の需要に対し、税理士は最適なアドバイザーと捉えられることでしょう。

税理士が経営コンサルティングを行うために必要なスキル/資質

税理士が経営コンサルティング業務を担うためには、税理士の専門業務範囲だけではなく、幅広い知識やスキルが必要です。

経営に対する幅広い知識/スキル

経営コンサルティングを提供するのですから、経営についての幅広い知識とスキルが必要です。
自分で会社を経営し結果を出すのが最適ですが、そうでない場合は中小企業診断士等の勉強をしたり、経営者の出した本を読んだりしてステップアップしましょう。
財務系特化型の経営コンサルティングを目指すとしても、経営の知識があれば強みになります。

クライアントのサービス/業界に対する専門知識

クライアントを取り巻く状況についても知っておかなくてはなりません。
たとえば感染症の拡大により危機的状況に立たされた飲食店に対して「周辺に飲食店が密集しており客の取り合いになっている」などとアドバイスをしてもクライアントには響きません。
常にアンテナを張り、クライアントが属する業界の専門知識と最新情報を入手し続ける必要があります。

課題を聞き出すヒアリング能力

多くの場合、経営コンサルティングを必要とするクライアントは、複数の問題に頭を悩ませています。深刻な問題が絡み合い、当事者は冷静に考えられません。
従って経営コンサルタントは、クライアントの抱える問題をヒアリングし第三者目線で可視化することから業務を開始します。
ヒアリングの時点で課題の全容を聞き出せないと、いくらコンサルティング業務を提供しても問題は解決しません。そのためヒアリング能力は経営コンサルタントに必要な能力と言えるでしょう。

課題解決策を構築できる論理的思考能力

ヒアリングした課題から解決策を考えます。
クライアントはその業界で奮闘してきた経営者ですから、思いつく限りの施策は試しているはずです。その上で経営コンサルタントから、より理想的な解決策が提案されることを期待しています。
また実現可能であることも重要なポイントです。
クライアントの規模や資金の余力、スケジュール、業界全体の流れなどを見極めて最適な解決策を導き出さなければなりません。思考力も経営コンサルタントに必須の能力なのです。

課題解決を提案する能力

解決策が構築できたら、いよいよクライアントに提案します。
提案する際には構成や理解しやすい表現など、クライアントがわかりやすいと感じられることも大切な要素に含まれます。
この解決策が最善であることを伝えてクライアントに納得してもらうため、提案力は重要であり欠かせない能力です。
そして合意が取れれば、その計画を実行するフェーズに進みます。
クライアントに寄り添い、確実に計画を実行して成功体験へと導きます。

経営コンサルティング業務に強い税理士になるには

税理士が経営コンサルティング業務を提供するなら、下記について知っておきましょう。

コンサルティングスキルが身に付く資格を取得する

経営コンサルティング業務の提供にあたり、必須の資格や経験はありません。
そのため税理士が経営コンサルティング業務を開始するとしても、届出や資格取得は不要です。
ただし信頼性や専門性を磨く為に、MBAや中小企業診断士などの資格を取得するのも良いでしょう。

・MBAとは:経営学の大学院修士課程を修了すると授与される学位のこと。日本語では「経営学修士」。
・中小企業診断士とは:「中小企業支援法」第11条に基づく国家資格。中小企業の経営課題に対応するために診断・助言を行う。中小企業診断士資格がなくてもコンサルティング業務は可能。

経営についての知識を深める

経営の知識を持っていれば、経営者が陥りやすい課題と解決策も提案できるようになります。
しかし簡単に会社立ち上げや経営はできませんので、経営者の自伝を読んだり経営者の集会に参加して話を伺ったりして、可能な範囲で生きた経営の知識を深めましょう。

得意分野や領域を作る

ある領域についての専門性を高め、専門領域でのコンサルティングを行う手段もあります。
たとえば飲食店専門のコンサルティング、ピアノやお習字といった教室系専門のコンサルティング、事業継承専門のコンサルティングなどです。
税理士としての経験が長い場合は、クライアントの専門性に基づいて経営コンサルティング業務の領域を決めることもあります。

コンサルティングファームなどで経験を積む

コンサルティング会社で働き、コンサルタントとしての経験を積む方法です。
コンサルティング会社にも様々な種類がありますので、自分のキャリアプランに合った会社で経験・スキルを取得することができるでしょう。
以下に主なコンサルティング会社の種類と特徴をまとめます。

・総合系:経営の全体的なコンサルティングを行う。事業戦略やM&Aなど。
・戦略系:経営のトップに関わるコンサルティングが中心。全社戦略や新規参入戦略など。
・財務系:お金に関するコンサルティングを行う。資金調達や財務の改善など。
・シンクタンク系:官公庁向けのリサーチなどを行う。

まとめ

会計業務などの業務がITツールに置き換わりつつある現在、税理士は新しい付加価値を創出し提供しなければなりません。
経営コンサルティング業務は税理士と相性が良いため、付加価値を提供したい場合には最適です。長く税理士として活躍する予定なら、本記事を参考に経営コンサルティング業務への理解を深めてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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