【就職・転職活動】会計/税理士事務所の志望動機の書き方を解説!注意点や面接についても紹介

2024年8月2日(記事更新日:2024年8月2日)

会計事務所や税理士事務所への転職でも、通常の転職と同じように履歴書や職務経歴書が求められることもあります。この場合、頭を悩ませるのが志望動機ではないでしょうか。
そこで今回は、会計業界への志望動機について解説いたします。

会計業界における就職・転職の現状

まずは会計業界の現状を確認しましょう。

人材不足

税理士試験の受験者数は年々減少しており、業界全体で若手税理士の人材が不足しています。
税理士資格は生涯使える資格です。そのため税理士の人数は増えているものの高齢化が進んでいると言われています。
マイナンバーや相続税、電帳法、インボイス対応等の法改正による新たな業務の増加も人材不足の一因になっています。

高付加価値サービスのニーズの高まり

現在の税理士に求められているサービスは、記帳代行や決算業務だけではありません。より高度で専門的なサービスの提供が期待されています。
その際たるものが経営コンサルティングです。多くの中小企業が、利益やボトルネックの解消、人材の採用・育成といった数々の問題を抱えています。このような問題に対するコンサルティングを提供してくれる税理士を求めているのです。
また経営コンサルティング業務の他に、国際税務などの高度な専門業務を行う機会も増えてきました。

詳しくはこちら
税理士の将来性とは?業界動向や今後の税理士に必要なことを解説! 

在宅ワークは二極化

世界的感染症拡大の影響で、税理士事務所でも在宅ワークが取り入れられました。5類感染症に移行した現在では、在宅ワークを続ける事務所と、従来の体制に戻す事務所に二極化しています。
求職者からは他の業界と同じように、引き続き在宅ワーク可能な事務所の求人の需要が高い傾向にあります。

クラウドツールの利用

在宅ワークを取りやめた事務所であっても、クライアントとの打ち合わせにはオンラインツールが継続利用されています。メール以外の社内での連絡方法でSlackなどのチャットツール導入も増えているようです。
一方で、使用する会計ソフトにそれほど大きな変化は見られません。
転職前にオンラインツールを使えるようになっておくと、実務ですぐに役立ちます。

会計/税理士事務所の志望動機を作る際のポイント

志望動機を作成するにあたり、書く前のポイントとやるべきことをまとめました。
事前情報をまとめておくことで、志望動機に確固たる意思と深みがプラスされます。

なぜ「会計/税理士事務所」を志望するのか?動機を明確にする

ポイントは大きく2点です。
 1.事業会社ではなく、会計/税理士事務所を選択した理由
 2.税理士として、もしくは税務会計領域で働きたいと思った理由・きっかけなどの明確化

事業会社とは、一般の企業のことです。税理士であっても一般の企業に就職することは可能です。それでも会計事務所を選択するのはなぜなのかを自分の言葉で説明します。
難しい場合は、税理士事務所を目指した瞬間を思い出してください。「経営者に説明する姿がカッコ良かった」「祖父の相続でお世話になったから」「父親が税理士で」といった理由が浮かんでくるのではないでしょうか。
もしくは、税理士の業務に注目しましょう。
「税務の専門家という立場から、中小企業の業務改善に取り組みたい」等。
汎用性が高いためこのままでは使えませんが、下記の項目と組み合わせれば唯一無二の志望動機になります。

これまで培った経験・スキルは?応募先に貢献できることを示す

職務経歴がある場合は、これまでの実務経験やスキル、新規顧客獲得数やクライアントの売上アップ等についてまとめます。
未経験の場合は、他の業界での業務経験のうち税理士事務所で生かせそうなスキルをまとめます。他には、税理士試験の成績もまとめてください。たとえば相続税法が突出して高得点であったなら、相続専門税理士事務所で重宝されるでしょう。

<税理士事務所で役立つスキルや経験の一例>
 1.税理士としての実務経験・担当業務
 2.経営に関する知識や資格
 3.一般企業での勤務経験
 4.語学力
 5.税理士試験の成績

自己アピールポイントは?資格・経験・業界を問わない強みを見直す

上記では税理士に関連するスキルや経験をまとめました。
ここではそれ以外の自己PRについてまとめます。

<まとめる項目>
 1.経理系資格
 2.税理士と親和性の高い資格
 3.コミュニケーションスキル等、定量化できないスキル

資格の有無は明確で分かりやすいので、必ずまとめておきましょう。
コミュニケーションスキルや傾聴スキルといった強みも税理士には必要な要素です。強みだと自覚しているならば、志望動機の作成前にまとめます。

就職・転職成功後は?目標や今後のキャリアを整理

自身のキャリアを明確化します。
就職して長く働き続けることが法人側にとってはベストですが、今後独立を目指している・親の跡を継ぐといったキャリアも考えられるでしょう。
また幅広い業務に携わりたいのか、特化型税理士になりたいのかでもキャリアプランは変わってきます。大手の税理士法人の場合、法人税や資産税等の専門部署が設置されていることも珍しくありません。
税理士は現場で働くプレイヤーが多いため、中規模以上の事務所では管理職が必要になります。管理職になりたいのかどうかも考えておくべきでしょう。
このように税理士として、どの分野で活躍したいのかは重要なポイントです。
5年後10年後にどのような働き方をしていたいのかを想像してください。そのキャリアに対して現状足りていないスキルの補い方を考えましょう。

人材ドラフトエージェントにポイントをインタビュー

現在、税理士等の転職をサポートしているエージェントにインタビューを行いました。
転職エージェント目線のポイントを確認しておきましょう。

■誤字脱字や読みやすさ
誤字脱字がないことや「てにをは」を正しく使用できているかは基本的なポイントです。
内容が志望動機から逸れていないかといった点も重要です。
採用担当者が読みやすいか、正しい文章になっているか確認しましょう。

■自己PRや退職理由だけの文章になっていないか
自己PRや前職の退職理由は、応募先の事務所から必ず聞かれます。
ただし志望動機には、入社したい積極的な理由を記載する必要があるため、自身のアピールに留まってしまう内容になっていないか確認してみましょう。

■会計/税理士事務所の採用担当者がよく見るポイント
 1.入社後にしたいこと・今後のキャリア
 2.経験などをどのように業務に役立てたいか
 3.応募している求人の業務内容を理解しているか
 4.自社の理念・方針に共感してもらえるか

人材ドラフトのエージェントサービスについてはこちら! 

志望する会計/税理士事務所の企業研究をする

就職・転職活動する際には、税務会計業界でも企業研究は必要です。あなたに合う事務所を探すためだけではなく、志望動機やあなたの熱意を具体的に認識できるようになります。下記のような様々な観点から分析してみましょう。

会計/税理士事務所の特徴を分析する

特徴を分析するために「規模」と「業務分野」の観点から調べてみます。

1.事務所規模
一般的に、小規模の事務所は地域密着型で、地域の中小企業をクライアントとしています。税理士の人数は1〜3人程度。所長との距離が近いのがポイントです。
中規模の事務所は広域の中小企業をクライアントとしています。税理士人数は3〜8人程度。税理士の他に会計スタッフを雇用しており、スタッフだけで20人以上を抱える事務所も存在します。会計スタッフがいるので、記帳代行のような作業は、税理士の手から離れます。
大規模な事務所や法人の場合、中小企業だけでなく大企業をクライアントとするケースもあります。受注する業務範囲は非常に幅広い反面、専門部署に分かれて仕事に取り組むので、できる業務は限定的になるでしょう。部署移動可能かどうかは事務所や法人の方針によります。

2.オールラウンダーか、特化型か
税理士事務所でも、オールラウンダー型か特化型かで業務内容が大きく異なります。
オールラウンダー型の特徴は、クライアントから要望があればなんでもやることです。法人税が中心であったとしても、相続税や贈与税、国際税務、その他の業務も担います。
対して特化型は、基本的に専門特化した分野しか引き受けません。よくあるのが相続専門税理士事務所です。相続税や資産税を中心に業務を受け、法人税等の業務は別の税理士事務所が担います。ただしクライアントの要望により、特化していない業務範囲を引き受けることもあるようです。

会計/税理士事務所の魅力を分析する

税理士事務所の魅力を分析します。事務所によって魅力は異なりますので、自分にとっても魅力なのかを考えながら分析しましょう。

1.事務所の業務内容
やりたい業務ができるのかを調べます。
たとえば特化型税理士事務所の場合は、特化している業務はできますが、それ以外は基本的にできません。やりたい業務かどうかを判断しましょう。
また税理士事務所の規模が大きいとクライアント規模も大きくなる傾向があり、より高度で専門的な業務ができる可能性が高まります。

2.税理士資格取得に対する姿勢
科目合格者やこれから税理士を目指す人にとって重要なポイントです。
税理士資格サポート制度が充実している事務所ならば、働きながら学習を進めやすい環境と言えます。
大学院学費援助や試験休暇等、事務所によってサポート体制は様々ですので、必要なサポートが受けられるのかを確認しましょう。

3.経営理念、代表者の思い
経営理念は社風と密接につながっています。つまり経営理念に共感できれば働きやすい事務所ですし、共感できなければ相性が良くない可能性が高いのです。
経営理念は多くの事務所が公開していますので、サイトを閲覧した際には一度目を通してください。

4.福利厚生
たとえば産休・育休取得は女性だけでなく男性にとっても重要です。
なお法定外福利厚生は事務所ごとに違います。退職金や社員旅行、健康診断など、どのようなものがあるか確認しておきましょう。
また福利厚生として「従業員全員参加型行事」が開催される事務所では、従業員同士の交流を大事にしていることが分かります。
資格取得応援や教育体制などからは育成に力を入れていることが分かります。

採用基準を分析する

採用基準を満たしていない場合は、原則として応募できません。また応募したとしても高い確率で不採用となってしまいます。事前にチェックしておきましょう。

1.経験あり/未経験OK
税理士事務所での経験もしくは税理士としての実務経験が必要かを確認します。
経験が必要な場合、即戦力として働ける人が求められています。
未経験であっても資格を取得していればOKだったり、中には無資格・未経験でもOKといった求人もあります。その場合は他に何が求められているのか他の採用基準を確認しましょう。

2.税理士資格の有無・科目合格
税理士資格保有者に限定された求人もありますが、それほど多くはありません。しかし科目合格以上とする求人は時期によらず多数存在します。
合格している科目次第で任せられる業務があるためです。
また税理士を目指して勉強中の人でも、税理士試験勉強での知識や意欲があれば採用されます。
税理士資格の取得応援をしている事務所もあるほどです。

3.学歴
会計業界では学歴よりも経験や資格による採用基準を重視する事務所が多く、高校卒業以上でも採用されています。
ただし事務所規模によっては学歴を重視するケースもあります。
また税理士事務所では、税理士や税理士試験の受験者が働いていることから、実際には大学卒業以上の人が多数を占めています。

4.必須(歓迎)スキル
地方都市の場合は普通自動車免許が必須なケースが少なくありません。
その他パソコンスキルやITツールに苦手意識がない、コミュニケーションスキルが高いといったポイントが評価されます。

求人から魅力を分析する

求人票に記載されている情報も読み解きましょう。

1.業務内容
一般的な業務は、月次決算書等を作成し、クライアントの元へ訪問し、経営者に内容を説明、経営者からの悩みや要望を聞き出す、といったことになります。
しかし訪問業務が発生せずオンラインで完結することも増えましたし、自計化が促進されたことでコンサルティング業務が主体となっている事務所も増えてきました。
自分がどのように働くのかを想像しながら読みましょう。

2.教育体制
中規模以上の税理士事務所では、レベルに応じた教育体制が整備されていることが多いようです。
毎年新卒採用を行なっている事務所では、未経験でも活躍できる教育体制が整っています。
一方で小規模事務所では教育制度が未整備だったり、前任者からの引継ぎのみで業務にあたることもあります。
経験の浅い人や未経験者は、教育制度にも着目してみるのも良いでしょう。

3.代表やスタッフなど、実際に働く人のインタビューから事務所の雰囲気を知る
求人票には、その事務所で働く人のインタビューが掲載されていることもあります。
実際に一緒に働くことになるかもしれませんし、事務所の雰囲気をつかむことができます。
インタビュー記事を見かけた場合は、ぜひ読んでみてください。

分からないことは転職エージェントに相談

企業研究は重要な作業ですが、調べても不明な点は出てくるものです。その時は転職エージェントに相談してください。
事務所や面接担当者の雰囲気・特徴を伝えてもらえます。他にも求人票だけでは分からない不明点などは、事務所に聞ける範囲でエージェントが情報収集してくれます。

人材ドラフトのエージェントサービスについてはこちら! 

会計/税理士事務所の志望動機作成時の注意点

上記で洗い出したポイントを中心に志望動機をまとめます。
実際に書き始めるにあたり、下記について知っておいてください。

汎用性の高い志望動機は避ける

別の税理士事務所でも通用する志望動機は避けましょう。
「この税理士事務所でしか通用しない志望動機」が最適です。
汎用性が高いかどうかは、面接担当者に分かるものです。そして「汎用性が高い=当事務所は第一志望ではない」と捉えられて不採用となってしまう恐れがあります。
複数に応募する場合でも、1社ごとに異なる志望動機を作成するように心がけてください。

条件や待遇面の魅力をメインにしない

たとえば「年間休日が130日あるので志望しました」では、あなたの業務に対するやりがいや事務所にどのように貢献してくれるのか、といった判断ができません。
条件や待遇、福利厚生の充実をメインにした志望動機ではなく、業務に関連する具体的な理由を前面に出しましょう。

自分の欠点や退職理由の伝え方を工夫する

欠点や前職の退職理由はネガティブな情報です。しかし次の職場では前向きに進むために、欠点は改善していること、退職理由は次に働く事務所に求めることは何かなどを考えてみてください。
会計業界で自分自身が成長していくために、どのように取り組んでいくかを書き出してみましょう。

面接対策も合わせて行う

面接対策も行いましょう。
基本的には一般企業での転職とあまり変わりませんが、面接回数に違いがあります。一般企業における面接回数は3~4回程度に比べて、税理士事務所では1~2回で完了することが多いようです。そのため、1回目の面接から事務所の代表先生が面接をするケースもあります。

一般的な会計/税理士事務所の面接の流れ

一般的な企業の面接とあまり変わりません。
ここでは一般的な流れを確認しておきましょう。

1.受付・入室
対面もしくはオンライン面接になりますが、いずれも時間厳守で受付を済ませます。
オンライン面接の場合、前もってネット環境を確認しておきましょう。

2.書類提出・面接
メールや郵送で事前に提出するケースもありますが、当日に履歴書や職務経歴書を提出する場合は、面接担当者に提出します。
面接担当者からの質問に答える形で進みます。
最後に逆質問があることを想定して、聞きたいことは事前に考えておきましょう。

3.退室
お礼を述べて退室します。
事務所で対面での面接の場合、事務所を出てからも気を抜かないようにしましょう。
税理士は訪問業務もあり、未来の同僚から見られている可能性があります。

面接での注意点

面接対策として下記のようなことに注意して、面接当日までにあらかじめ準備しておくことが大事です。

■服装の注意点
基本的には、スーツやオフィスカジュアル+ジャケット以上など、一般的な面接での服装、もしくはそれ以上にフォーマルな装いを心がけて臨みましょう。
またカバンや靴の汚れは落としてください。ヘアスタイルやメイク、アクセサリーも清潔感重視でまとめます。
そのままクライアントを訪問できる服装が、税理士事務所の面接には適しています。
また面接を受ける事務所の、勤務時のドレスコードから雰囲気も知ることができます。

■履歴書の志望動機から矛盾しないようにする
履歴書に記載した志望動機と、面接での質問に回答した内容に一貫性がない場合、面接担当者は違和感を覚えます。
そして志望動機と回答がずれていれば、不信感を持たれてしまい不採用になってしまいます。
志望動機や自己PRなどは、自分の言葉で考え整理しておきましょう。

■面接でよく聞かれること
面接では必ず志望動機は聞かれます。同じように他にも、よく聞かれる質問は大体決まっています。
面接対策として事前に考えておくだけではなく、スムーズに受け答えできるように練習しておきましょう。

・前職の退職理由
あなたが転職者の場合は必ず聞かれます。
退職理由がネガティブな理由の場合もあるかと思います。ですが新たな道に進むための転職に至ったわけですから、ポジティブに考えてみてください。
ただし「家族の入院で」のような不可抗力の理由については、そのまま伝えて構いません。

・職務経歴
これまでの経験してきた業務内容や実績は、必ず聞かれる質問です。
職務経歴書に記載している内容から1〜2分程度にまとめておくと簡潔に伝えられます。
職歴が多い場合は、面接を受けている事務所でも通用する職務を中心に伝えます。あなたがその事務所でどのように活躍していけるか伝えることが大切です。

・逆質問
面接の最後に聞かれることのある質問です。
逆質問で好印象となるのは「入社した未来が見えているか確認できる質問」です。具体的には「入社前にしておくこと」「事務所でのキャリアプランの確認」「入社後の研修体制」等です。
ただし企業研究などから分かる事項や、面接中に伝えられた内容については逆質問から省いてください。

まとめ

会計事務所や税理士事務所への転職においても、志望動機は非常に大切なポイントです。
汎用性の高い志望動機は敬遠される傾向にありますので、本記事を参考に、あなただけの魅力的な志望動機を作成してください。
どうしても書けない場合は転職エージェントに相談しましょう。あなたの良さや思いを引き出してくれますよ。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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