河野太郎大臣の「全納税者が確定申告」の影響調査。会計業界の84%が「税負担が増えるケースが多発する」と予想

2024年9月6日(記事更新日:2024年9月9日)

税理士の転職サービスを展開する株式会社人材ドラフト(本社:東京都千代田区、代表取締役:鈴木麻紗子)は、「年末調整の廃止&全納税者の確定申告化」の政策案を受け、会社員や企業にどのような影響が出るか調査を行いました。その結果、会計業界の84%が「確定申告を忘れて各種控除が受けられなくなる(=税負担が増える)ケースが続出する」と予想している実態が明らかになりました。確定申告を適切に行えない労働者へのケアが不十分だった場合、基礎控除や配偶者控除などが適用されず、個人の税額が大きく増えるケースが考えられます。

調査の背景

自民党総裁選の公約として、9/4(水)に河野太郎デジタル相が「年末調整を廃止し全ての納税者に確定申告をしてもらう案(以下、”確定申告の全体化”と呼称)」を示しました。支援が必要な人に迅速に対応するための「デジタルセーフティーネット」構築のためとしています。しかしながら、本政策への実効性などにおいては世論でも賛否両論の状態となっており、税務に不慣れな人にとっては適切な判断が難しい状況にあります。そこで人材ドラフトは、税理士事務所や企業経理で働く人を対象としてアンケートを行い、本政策のメリット・デメリット・リスクなどを調査いたしました。

■税負担が増えるケースが多発すると84%が予想。支援が必要な人への迅速なサポートは、会計業界の中でも意見が分かれる

全納税者が確定申告を実施する場合で、申告を忘れると各種控除が適用されなくなり、今よりも税額が増えるケースが多発すると予想しています。一方で本来の目的である「支援が必要な人への迅速なサポート」は、実効性について会計業界においても評価が分かれています。

■本政策を実施した時、混乱が発生すると72%が予想。実際に政策を行うべきとしたのは36%

「全納税者の確定申告化」を実施した場合、企業の経理部門の業務負荷が高まり、混乱が発生すると想定した割合は7割にのぼりました。こうした点を踏まえて、本政策を行うべきと回答したのは36%に留まり、会計業界としても慎重な姿勢を取っていると言えます。仮に実施する場合、「十分な移行期間を設ける」、「会社員への啓蒙活動を行う」、「確定申告が完了していない人へ自動通知を行い、適用できる控除がないかマイナポータル上で提案する」などの取り組みが必要という意見が多くみられました。

アンケート調査詳細

Q1.あなたの勤務先をお選びください

・勤務先:会計事務所および企業経理部門が約7割

Q2.あなたの勤務先の都道府県をお選びください

・勤務先は都内を中心に全国幅広く集計

Q3.「全納税者の確定申告化」により、下記のようなメリットが挙げられています。実際にメリットになると思いますか?

Q3-1.会社員が税金や社会保険の負担を認識しやすくなる
・「そう思う」「ややそう思う」で約6割を占める

Q3-2.会社員の会計リテラシーが向上する
・「そう思う」「ややそう思う」で約5割

Q3-3.所得情報のシステム連携により、収入が減少した際に迅速に支援できる(住民税が前年所得ではなく当年所得で課税されるなど
・「そう思う」「ややそう思う」で約4割

Q3-4.企業にとって経理・会計業務の負担が減る
・経理部門の負担削減は6割が同意。移行期間中は負荷が高まるが、浸透できれば業務負荷が改善するとの見通し。

Q3-5.年末調整の廃止により、会計事務所の業務負荷が下がる
・会計事務所の負荷は減らないとの予想が多い。

Q3-6.確定申告の増加により、会計事務所にビジネスチャンスが生まれる
・確定申告のサポートなどで、6割が「新たなチャンスが生まれる」と回答

Q3-7.社会全体で「納税に関わる労務コスト」が削減でき、より付加価値の高い業務に注力できる
・社会全体での効率化には懐疑的

Q3-8.社会全体で税金への意識が高まり、より適切な使い道に税金が使われるようになる
・税金の有効活用についても約7割が効果なしと回答した。

Q5.「全納税者の確定申告化」により、下記のようなデメリットが挙げられています。実際にデメリットになると思いますか?

Q5‐1.確定申告を忘れて各種控除を受けられないケースが多発する
・約8割が「控除を受けられないケース」=税負担の増加を予想。

Q5‐2.移行期間において「税務署」の業務負荷が高まり混乱が発生する
・9割が税務署の負荷が高まると予想。

Q5‐3.移行期間において「企業の経理部門」の業務負荷が高まり混乱が発生する
・7割が経理部門の負荷が高まると予想。

Q5‐4.移行期間において「税理士事務所」の業務負荷が高まり混乱が発生する
・8割が税理士事務所の負荷が高まると予想。

Q7.「全納税者の確定申告化」の実現性についてお聞きします。この施策は実現可能だと思いますか?
・6割弱が実現は可能と回答。

Q8. 「全納税者の確定申告化」 を実現可能にするには、どのような仕組みを行えば良いと思いますか?当てはまるものを「すべて」選んでください

1.マイナンバーで各公的機関と自動連係(税務署、社会保険事務所、ハローワーク、労働基準監督署、自治体の税務課等)78件(54.5%)
2.マイナンバーで民間事業者と自動連係(保険会社・住宅ローン金融機関など)55件(38.5%)
3.十分な移行期間を設ける70件(49%)
4.会社員への啓蒙活動を行う69件(48.3%)
5.税理士など、税務のアドバイスを利用する際に補助金で支援する54件(37.8%)
6.マネーフォワードやfreeeなど、会計ツールを利用する際に補助金で支援する32件(22.4%)
7.確定申告が完了していない人に自動通知を行い、適用できる控除がないかマイナポータル上で提案する60件(42%)
8.どのような取り組みを行っても実現不可能だと思う39件(27.3%)

・その他自由回答
義務教育期間中に税に対する教育を行う
源泉所得税率の見直し
税金の計算を簡略化
税務署職員の増員
積極的なデジタルの取り組みとデジタル難民に対しての民間でのサポート

Q9.「全納税者の確定申告化」の是非についてついてお聞きします。実現性や移行期の混乱を「考慮に入れない」場合、この施策は行うべきだと思いますか?

Q10.「全納税者の確定申告化」の是非についてついてお聞きします。実現性や移行期の混乱を「考慮に入れた」場合、この施策は行うべきだと思いますか?

・いずれの場合においても、施策を実施すべきと考えるのは4割程度にとどまった。

今回の調査を通じて

全納税者が確定申告を行うことで、税や社会保険への意識が高まるなどのメリットも挙げられています。一方で、リテラシーの問題で確定申告を行えなかった際に、納税者が不利益を被るケースも発生しうるため、本政策の運用にはきめ細やかなケアが必要という意見が見られました。人材ドラフトは税理士のキャリア支援を行うだけでなく、税務会計領域における”あるべき姿”についても検討を行い、業界を通じて建設的な議論が行えるように、努力とサポートを実施してまいります。

調査の詳細

【確定申告の全体化についての調査】
年末調整の廃止、および全納税者の確定申告実施について、影響やメリット・デメリットの調査を実施。
調査期間:2024年9月6(金)
調査方法:人材ドラフトの登録会員によるインターネット調査
対象者:居住地 全国、 年代 不問、 性別 男女不問
回収サンプル数:142(139+追加3件)

会計業界最大級の転職支援サービス「人材ドラフト」

税務会計分野に特化した求人マッチングサイトおよび人材紹介サービス『人材ドラフト』を運営。業界最大級の求人数を掲載し、トップクラスの認知度と実績を誇ります。業界最大手から小規模事務所まで、延べ7,000社以上の企業が活用しています。

■サービス名:人材ドラフトWEB/人材ドラフトエージェント

■エリア展開:全国
【主要エリア】
東京都:https://www.jinzai-draft.com/prefecture-13
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北海道:https://www.jinzai-draft.com/prefecture-1

株式会社人材ドラフトについて

会計事務所や事業会社の経理ポジションなどを中心とした、転職サイト・人材紹介を運営。会計領域で働く方のキャリア構築のお手伝いをしています。創業者は大手資格学校の人材企業を経営後、人材ドラフトを立ち上げ。創業以来約25年、会計事務所や税理士法人、監査法人、法人経理や財務の採用を支援しています。

会社概要

  • 社名:株式会社人材ドラフト
  • 本社所在地:東京都千代田区神田神保町1丁目14番地3 MT-O神保町6階
  • 代表取締役:鈴木麻紗子
  • 事業内容: 税理士を中心とした税務会計領域における転職支援サービス
  • 設立: 2000年7月18日
  • 事業内容: 求人転職サイト「人材ドラフトWEB」および「人材紹介事業」
  • HP:https://www.jinzai-draft.com/corporate/

この記事の監修者

人材ドラフト総研 所長
三山 晋大朗

株式会社人材ドラフト 執行役員およびビジネス企画部 部長。税務・会計領域での転職状況や税理士の実態を調査分析する「人材ドラフト総研」責任者。

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